室内環境
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原著論文
寝室空気中に浮遊する担子菌類の4シーズンにわたる調査
川上 裕司 小田 尚幸橋本 一浩神山 典子山崎 史福冨 友馬
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2019 年 22 巻 2 号 p. 137-144

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抄録

近年,スエヒロタケ(Schizophyllum commune)などの担子菌(Basidiomycete)を原因とする深在性真菌症の症例が広く認知されるようになってきた。担子菌類は培地上で子実体を形成することは稀であり, 白色系のcolony(mycelium)を形成するだけで, 形態的特徴が乏しい。これまでの慣習として, 糸状性担子菌類(Filamentous Basidiomycetes)が分離された場合には「White filamentous fungi」または「Mycelia Sterilia」と便宜的に分類し, 詳細な同定検査対象から外すことが常であった。そのため, 室内環境における担子菌類の分布は明らかにされていない。筆者らは担子菌類の住宅内における浮遊実態を明らかにするために, 1都3県に所在する計20軒の一般住宅(寝室と隣接するベランダ)を対象として, 2016年の秋季から2017年夏季の4季に渡って浮遊真菌の調査を実施した。調査で分離された菌株は, ITS領域の遺伝子配列解析によって同定した。その結果, 合計17軒の寝室から, 秋季に29株, 冬季に7株, 春季に23株, 夏季に49株の白色糸状真菌(White filamentous fungi)を単離し, スエヒロタケをはじめとした4目7科20種の担子菌を同定した。最多分離菌種はアラゲカワラタケ(Trametes hirsuta)の38株であり, 次いでTrametes lactineaの12株だった。臨床上の重要菌種であるスエヒロタケは10株分離された。また, 担子菌は種類によって, 胞子の拡散時期に季節性があることが示唆された。本調査から, 一般住宅の室内空気中における担子菌類の浮遊実態の一端が明らかになった。

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© 2019 一般社団法人 室内環境学会
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